table of contents
- (1)商標法上の定義
- (2)商標と認められるもの
- (3)商標と認められないもの
- 匂い、味、手触り
- (4)標準文字
(1)商標法上の定義
商標法第2条第1項には、
「この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」
(2)商標と認められるもの
要するに、日本の商標法で商標と認められるものは、以下の態様となります。
文字のみ(文字商標)





文字のみからなる商標のことを「文字商標」といいます。
文字は「ひらがな」(例:あいうえお)、「カタカナ」(例:アイウエオ)、漢字(例:愛宇絵尾)、ローマ字(アルファベット)(例:AIUEO)、数字(例:56789)などにとって表されます。
文字商標は「ひらがな」「カタカナ」「漢字」「ローマ字」「数字」のいずれか複数又は全部を組み合わせたものでもかまいません。また、文字商標が特定の意味を有するか否かは問いません。
「。」「、」句読点、「?」疑問符(クエスチョンマーク)、「!」感嘆符(ビックリマーク)、「,」コンマ、「.」ピリオド、「-」ハイフン、「・」中点なども文字商標として使用することができます。
句読点、疑問符、感嘆符などは、一般的には「記号」と呼ばれますが、下記で説明する「標準文字」にはこれらの記号の一部が含まれています。
会社の名称である「商号」は、法務局に登記する際に使用することができる文字及び記号が定められていますが(商号で使える文字を参照)、特許庁に出願することができる文字は「商号」のような制限がありません。
文字の書体としては、明朝体、ゴシック体、ローマン、イタリックなどさまざまなものがあります。商標の文字の書体は、特に制限がなく、どんなものでもかまいません。もちろん、新しく作成した書体であってもかまいません。
書体とフォントは同じ意味で使っていることが多いですが、厳密には意味が違います。詳しくは公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)「書体とフォントの違いは何ですか?」をご参照ください。


文字はローマ字(アルファベット)以外の外国語の文字も含まれます。例えば、ハングル(韓国文字)やアラビア文字、簡体字、繫体字、ギリシャ文字などの文字であってもかまいません。つまり、世界に存在する文字は商標法上の文字と認められます。
また、異なる文字の組み合わせ(日本語の文字と外国語の文字の組み合わせ、異なる外国語の文字の組み合わせ)であってもかまいません。
このように文字(一般に記号と認識されているものを含む)のみからなる「文字商標」では、文字の種類や書体などについて何ら制限が設けられていません。
ただし、特許庁長官が指定する文字(標準文字)からなる商標では、使用することができる文字が制限されています。詳しくは、下記の「標準文字」をご参照ください。
図形のみ(図形商標)

写実的なものから図案化したもの、幾何学的模様等の図形のみから構成される商標のことを「図形商標」といいます。
記号のみ(記号商標)

暖簾(のれん)記号、文字を図案化し組み合わせた記号、記号的な紋章のことを「記号商標」といいます。
暖簾記号とは、店舗ののれん等に表される、屋号を表す記号のことです。
立体的形状(立体商標)

3次元の立体的形状からなる商標のことを「立体商標」といいます。例えば、実
在又は架空の人物、動物等を人形のように立体化したものなどです。
なお、文字商標、図形商標、及び記号商標などの2次元の平面的な商標は、立体商標との対比から平面商標と呼ばれます。
結合商標
異なる意味合いを持つ文字と文字を組み合わせた商標や、文字、図形、記号、立体的形状の二つ以上を組み合わせた商標のことを「結合商標」といいます。
文字と図形の組み合わせ

文字と記号の組み合わせ

結合商標としては、その他に、図形と記号の組み合わせ、文字と図形と記号の組み合わせ、立体的形状と文字等の組み合わせがあります。
色彩との組み合わせ
文字商標、図形商標、記号商標、立体商標、及び結合商標は、それぞれ色彩を付すことができます。すなわち、文字商標、図形商標、記号商標、立体商標、又は結合商標と色彩との組み合わせが商標と認められます。
文字と色彩の組み合わせ

立体商標と色彩の組み合わせ

ロゴについて Oxford Languagesによれば、{「ロゴ」とは、「ロゴタイプ」の略。会社名・商品名などの文字を特別にデザインしたもの。意匠文字。}とあります。文字を図案化したもの、記号、図形、それらを組み合わせたものなど様々な態様のものがあります。ロゴは会社・商品などを象徴するマークとして使用されています。当然、ロゴも商標として認められており、多くの企業や団体がロゴの商標登録を取得されています。

動き商標
文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標のことを「動き商標」といいます。例えば、テレビやコンピューター画面等に映し出されて変化する文字や図形等があります。
動き商標は、一連の動きを何枚かの写真や図で表します。
上の連続した画像は、株式会社はせがわの動き商標です。
商標の詳細な説明には「図1の少女が、図2から図5にかけて顔の両脇に広げた両手を徐々に近づけ、図6から図8にかけて両手を合わせて目を閉じ、頭を垂れて合掌のポーズを取る様子を表している。この動き商標は、全体として7秒間である。」と説明されています。(商標登録第5857149号より引用)
ホログラム商標
文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標のことを「ホログラム商標」といいます。
上の画像は、三井住友カード株式会社のホログラム商標です。
色彩のみからなる商標
単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標(これまでの図形等に色彩が付されたものではない商標)であって、輪郭なく使用できるものを「色彩のみからなる商標」といいます。例えば、商品の包装紙や広告用の看板等の色彩を付する対象物によって形状を変えて使用する色彩が考えられます。

上の画像は、株式会社トンボ鉛筆(消しゴムのケース)の色彩のみからなる商標です。

上の画像は、株式会社セブン-イレブン・ジャパンの色彩のみからなる商標です。
音商標
音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標のことを「音商標」といいます。例えば、テレビ CM に使われるサウンドロゴやパソコンの起動音等が考えられます。

上の画像は、救心製薬株式会社の「きゅうーしん きゅうしん」の音商標です。
位置商標
図形等を商品等に付す位置が特定される商標のことを「位置商標」といいます。

上の画像は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの位置商標です。
(3)商標と認められないもの
日本の商標法で商標と認められないものは、以下の態様になります。
匂い
「知覚」のうち「嗅覚」に基づく「匂い」は、現在の法律では商標と認められていません。
味
「知覚」のうち「味覚」に基づく「味」は、現在の法律では商標と認められていません。
手触り
ザラザラ、サラサラ、ツルツルなど、「知覚」のうち「触覚」に基づく「手触り」は、現在の法律では商標と認められていません。
(4)標準文字
「標準文字制度」は、文字のみからなる商標(文字商標)の場合において、出願人が特別の態様について権利要求をしないときは、出願人の意思表示に基づき、商標登録を受けようとする商標を願書に記載するだけで、特許庁長官があらかじめ定めた一定の文字書体(標準文字)によるものをその商標の表示態様として公表し及び登録する制度です。
商標登録出願を行う際、願書には商標を特定するための画像(イメージ)を貼り付ける必要がありますが、標準文字の場合は、テキストの文字を記載するだけでよく、画像を貼り付ける必要がありません。
詳しくは「指定商品・指定役務とは?商品・役務の区分とは?」の「願書に記載すべき事項」をご参照ください。
標準文字制度を利用するか否か
一般に、実際に使用する文字書体が決まっている場合は、標準文字でなく、その文字書体で商標登録出願します。
使用する文字書体が決まっていない場合や、使用する文字書体を将来変更する可能性がある場合は、標準文字で商標登録出願することをお勧めします。
最も強い権利を形成する方法は、使用する文字書体(使用する可能性のある文字書体)と標準文字の両方を商標登録出願することです。
標準文字として使用することができる全角文字
商標の「標準文字」として使用できるのは特定の全角文字のみです。半角や文字修飾は認められません。
・全角空白(連続して2つ以上使用するのは不可)
・ひらがな全て
・0~9の数字全て
・英大文字、英小文字全て
・カタカナ全て
・JIS-X0208-1997の第1水準、第2水準で規定された漢字全て
・以下の27種の記号
「、」(読点)
「。」(句点)
「,」(コンマ)
「.」(ピリオド)
「・」(中点)
「!」(感嘆符)
「ゝ」(平仮名繰返し記号)
「ゞ」(平仮名繰返し記号(濁点))
「々」(繰返し記号)
「ー」(長音記号)
「-」(ダッシュ)
「~」(波ダッシュ)
「‘」(左シングル引用符)
「’」(右シングル引用符)
( (始め小括弧)
)(終わり小括弧)
〔 (始め亀甲括弧)
〕(終わり亀甲括弧)
[ (始め大括弧)
](終わり大括弧)
「 (始めかぎ括弧)
」(終わりかぎ括弧)
+ (正符号)
- (負符号)
% (パーセント)
& (アンパサンド)
@ (単価記号)
より詳しくは「平成28年9月23日に指定された標準文字一覧(PDF)」をご参照ください。
標準文字として認められない例
①図形のみの商標、図形と文字の結合商標
②特許庁長官の指定文字以外の文字を含む商標
③文字数の制限30文字を越える文字(スペースも文字数に加える)からなる商標
④縦書きの商標、2段以上の構成からなる商標
⑤ポイントの異なる文字を含む商標
⑥色彩を付した商標
⑦文字の一部が図形的に、又は異なる書体で記載されている商標
⑧花文字など特殊文字、草書体など特殊書体で記載された商標
⑨スペースの連続を含む商標
参考資料
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