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(1)登録商標を指定商品・指定役務について独占的に使用できる
社会通念上同一の商標
(2)登録商標と同一・類似の商標を指定商品・指定役務と同一・類似の商品・役務についての他人の使用を排除できる
差止請求権
損害賠償請求権
(5)使用許諾
(6)商標権の移転
(1)登録商標を指定商品・指定役務について独占的に使用できる
商標権者は、登録商標を指定商品・指定役務について独占的に使用することができます(商標法第25条)。この権利を専用権といいます。専用権の範囲は下の図の黄色の範囲です。

社会通念上同一の商標
登録商標と同一の範囲内にある商標、すなわち、社会通念上同一と認められる商標は専用権の範囲に入ります。社会通念上同一の商標については、「商標の使用とは?商標の使用義務とは?」の社会通念上同一の商標をご参照ください。
(2)登録商標と同一・類似の商標を指定商品・指定役務と同一・類似の商品・役務についての他人の使用を排除できる
商標権者は、登録商標と同一・類似の商標を指定商品・指定役務と同一・類似の商品・役務についての他人(第三者)の使用を排除することができます(商標法第25条、第37条第1号)。この権利を禁止権といいます。禁止権の範囲は上の図のピンクの範囲です。
禁止権の範囲では、事実上使用することができますが(商標権を取得していない場合と同様)、他人の商標権の禁止権の範囲に抵触すれば、他人の商標権の侵害となってしまいます。
ですから、商標権者は、自身の商標を使用する場合、専用権の範囲(社会通念上同一の商標の範囲)であるか禁止権の範囲であるかを十分認識しておく必要があります。
効力の範囲 | 商品・役務 | 商品・役務 | 商品・役務 | |
同一 | 類似 | 非類似 | ||
商標 | 同一 | ◎ | 〇 | ✖ |
商標 | 類似 | 〇 | 〇 | ✖ |
商標 | 非類似 | ✖ | ✖ | ✖ |
上の表の◎は専用権の範囲、〇は禁止権の範囲です。
差止請求権
商標権者は、専用権及び禁止権の範囲内の他人の侵害行為に対し、その行為の停止・予防を請求することができます(商標法第36条)。
また、商標権者は、侵害行為を組成した物の廃棄、侵害行為に供した設備の除去などを請求することもできます。
損害賠償請求
商標権者は、専用権及び禁止権の範囲の他人の侵害行為により損害が発生したときは、損害の賠償を請求することができます。
損害額は、侵害者の利益額、逸失利益額(譲渡数量×単位数量当たりの利益額)、使用料相当額などによって算出されます(商標法第38条)。
(3)商標権の効力が及ばない範囲
商標権は、次の行為に対しては効力が及びません(商標法第26条)。
①自己の氏名・名称等を普通に用いられる方法で表示する場合
自身の会社名と同一の登録商標があった場合であっても、自身の会社名を示すものとして使用する行為については商標権侵害にはなりません。
②商品又は役務の普通名称、品質等を普通に用いられる方法で表示する場合
過誤等により商品や役務の普通名称や品質を表す文字等が登録された場合であっても、商品や役務の普通名称や品質を表すものとして使用する範囲においては、第三者も自由に使用することができ、商標権侵害にはなりません。
(4)先使用による商標を使用する権利

他人(上の図のB会社)の商標登録出願前から商標の使用をしていた結果、他人の商標登録出願の際にその商標が周知商標になっているときは、その周知商標の使用者(上の図のA会社)は、継続してその商品又は役務についてその周知商標の使用をすることができます(商標法第32条)。
このような他人の出願より先に使用を開始した者に与えられる権利を「先使用による商標を使用する権利(先使用権)」といいます。
(5)使用許諾
商標権者は、他人に登録商標の使用を許諾することができます。商標権者は、他人に登録商標の使用を許諾した場合、ライセンス料を受け取ることができます。
専用使用権:商標権者は、他人に独占的な登録商標の使用を許諾することができます。このような独占的な使用権を専用使用権といいます。
通常使用権:商標権者は、他人に非独占的な登録商標の使用を許諾することができます。このような非独占的な使用権を通常使用権といいます。
(6)商標権の移転
商標権は財産権ですので、商標権者は商標権を他人に移転(譲渡等)することができます(商標法第24条の2)。
商標権は、指定商品・指定役務が複数ある場合は、指定商品・指定役務毎に移転することも可能です。
商標権者は、商標権に複数の指定商品・指定役務がある場合は、指定商品・指定役務毎に商標権を分割することができます(商標法第24条)。
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